祖母の遺影

Added on by Atsushi Hirao.

数週間前、祖母が亡くなりました。

遺影には私が撮った写真が使われました。

子供6人。孫16人。そしてひ孫多数。子供の頃、祖母の家はいつでも子供が溢れていた記憶があります。

私は特別おばあちゃんっ子という訳ではなかったし、祖母にとっても私は16人いる孫のうち特別な一人という訳ではなかったと思います。
でも今までの人生で一度だけ、じっくりと祖母と向き合う時間がありました。

5年前の夏、私は大学の卒業論文で過疎地域に関する調査をしていました。
当時祖母が一人暮らしをしていたのは長野県北部の人口2000人ほどの小さな村で、調査対象としてはぴったりの場所でした。

そこで私は祖母の家に泊まり込みで調査をすることにしました。

祖母との奇妙な二人暮らしが始まりました。


祖母の家は築100年以上のボロ屋という言葉がぴったりの家で、親戚からは「本当にあんなところに住めるのか、そんなことを言い出した孫は今までいない。」とまで言われました。
もちろん、近所にコンビニはおろか、スパーもないので、数日に一度、叔母が食材を届けてくれることになり、それを私が調理することになりました。

今まで祖母とここまで長い時間、2人で過ごしたことはありませんでした。

2週間も2人きりで過ごすと、いくら祖母と孫でもイライラやギクシャクすることが多少あります。
と同時に、今まで自分は祖母ついて知らなかったことがたくさんあったのだと気付かされました。

晩年は田舎のボロ屋で一人暮らしをすることも難しくなり、親戚の家に身を寄せていた祖母。
その祖母が最後に過ごした家での日々を撮影できたことは私にとって大切な記憶となりました。

大げさかもしれませんが、遺影は亡くなった方の一生を代表する写真だと思います。
その写真を自分の手で遺せたことに孫として、そして写真家として、よかったと思っています。