ライトルームでモノクロ化する方法

Added on by Atsushi Hirao.

私が写真を始めたころは、デジタル一眼レフはまだまだ高校生に買えるような値段ではありませんでした。でも、写真集で見たあんな写真が撮りたい、プロと同じ条件で写真を撮れるのはフィルムカメラ、それもモノクロの自家現像・自家プリントしかない!というのが私がモノクロを始めたきっかけでした。

そして今はフィルムカメラを使うことも減り、モノクロの撮影・印刷も大部分をデジタル化しました。
そこで今日はデジタルのモノクロ変換に関してお話しようと思います。

そもそも人間の目というのはカラーで見ているわけで、モノクロというのは不自然なものです。ということで本来モノクロ写真というのは自分が実際に見ている色をモノクロにどのように変換するかというのを考えながら撮影しなければならないものです。


モノクロ風景写真の巨匠、アンセル・アダムスは撮影時に様々なフィルターを使い分けていたことが知られています。
またアラーキーこと荒木経惟さんも、モノクロで女性を撮るときは必ず口紅を塗るように指示したそうです。そうしないと唇が肌色と同じ明るさで、血の気が引いたように見えるからです。

ではこれがデジタルカメラになるとどうなるか。
プリセットを使い、ボタン一つでモノクロ変換という方も多いのではないでしょうか。
それではもったいないので私のやり方をご紹介します。
 

せっかくヨセミテの写真が手元にあったのでこれを使います。
私はLightroomを使って現像していますが、他のソフトでも同様のことができると思います。
下の画像ではすでに明るさやコントラストの調整が終わっています。

現像モジュールの白黒ミックスを選択すると早速画像が白黒に変換されます。

次にスライダーを動かしてみます。
スライダの左側に色の名前が書いてありますが、レッドのスライダを動かせば、写真の赤い部分だけが暗くなったり明るくなったりします。ここで全てのスライダを極端に両方に動かしてみます。
そうすると、どのスライダを動かせば写真のどの部分が変化するかわかると思います。

今回の場合は空を暗めにしたかったので、ブルーとアクアのスライダーがマイナス方面に移動してあります。

ここで重要なのがスライダのバランスです。
よく見ると、スライダが蛇がうねるような曲線を描いているのがお分かりだと思います。
これは隣り合う色のスライダを大きく引き離すと、その中間の階調が無理に引き伸ばされてしまうからです。

そしてもう一つ注意しなければいけないのが、レッドとマゼンタは本来隣り合う色ということです。

イメージとしてはこんな感じです。つまり、レッドとマゼンタの数値がかけ離れたものにならないように注意する必要があります。

 

このようにデジタル写真のモノクロ化は以上の点に気をつけながら、背景のトーンから被写体を浮き上がらせます。あまりやりすぎると階調が崩壊するので程ほどに。最後はPhotoshopでマスクを使って仕上げます。

 

デジタルになって覆い焼きも焼きこみも試行錯誤がしやすくなりましたが、いいプリントを作り上げるのは簡単ではないですね。